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2013年3月31日日曜日

「オーディオ絶対領域」にPCOCC-A製造中止についてのオヤイデ電気取材記事掲載。


古河電工のオーディオ用高音質導体PC-OCC(PCOCC-H)、並びにPCOCC-Aが、今年度をもって生産終了になることは、すでに先日のみじんこブログや、ファイルウェブなどのニュースサイト、古河電工のホームページに掲載されたので、すでに皆さんご承知のことと思います。

これはPCOCCの結晶粒界の少なさを示す有名な顕微鏡写真。上がPCOCCで、下が普通の電気銅。この違いは銅線の製造過程の冷やし方に起因しています。電気炉から出て来た銅を線引きするとき、通常の電気銅は自然に冷やされていくので、銅線が早く冷めてしまい、多数の結晶粒界が出来上がります。また、電気銅は結晶粒界に不純物や空隙が生じやすく、これも電子の流れを妨げる要因となっています。一方のPCOCCでは、ゆっくりと冷やすことで結晶粒界がほとんど存在しません。また、PCOCCでは結晶粒界がほとんどないことで不純物や空隙が生じにくく、電子の流れがスムーズになると考えられています。ちなみに、PCOCCは表立って純度を公表していませんが、一般には5N相当と言われており、一部では7N相当と謳っているところもあります。

溶解している物質をゆっくりと冷やすと不純物が少なくなるという理屈、これは氷と同じです。水を普通の冷凍庫で急激に冷やすと、空気を含んだ透明度の低い氷になります。一方、水を製氷用の特殊な製氷設備でゆっくりと時間をかけて凍らせると、水分子がゆっくりと結晶化していくため、空気や不純物が水中から抜けていく時間的余裕があります。そして気泡を含まない透明度の高い氷が出来上がります。

PCOCCの開発者である大野博士が「ゆっくりと冷やせば銅も巨大結晶化する」ことを見出したとき、学会では非論理的と捉えられていたようですが、そんな逆風にもめげず大野博士は大野式鋳造法を見事確立。そしてこの鋳造法(ピュアカッパー-大野式キャスティングプロセス=略してPC-OCC)を古河電工が導入して以降、PCOCCはオーディオ用線材の代表格として、皆が知るところとなったのです。似たような巨大結晶銅は、古河電工以外にも日立電線のLC-OFCや三菱電線のDUCCがありますが、広義には大野式鋳造法を応用したものです。また、世の中にはOCCやUP-OCCと呼ばれる銅線がありますが、これは大野博士が大野式鋳造法を自由に使ってほしいとの計らいで、あえて特許を取らなかったためで、大野式鋳造法を元にした銅線に付けられている呼称です。

ちなみに、PCOCCをアニール(焼き鈍し)して使いやすくしたものがPCOCC-Aです。焼き鈍し前のPCOCCは、業界的にはPCOCC-Hと言います。

余談ですが、溶解した金属を結晶化する間もないくらい急激に冷やすと、非晶質金属、すなわちアモルファス金属が出来上がります。アモルファスは磨耗に強いので、よくカセットデッキのヘッドにアモルファス合金が使われていましたね。




話を戻して、私たちがPCOCC生産終了を知ったのは、たしか2月中旬のこと。某オーディオ店に立ち寄ったとき、店員さんから「PCOCCが生産終了って聞いたんですけど本当ですか」と尋ねられ、そんな話は聞いていなかったので、まさかと思い仲介業者に確認を取ったところ、事実だと分かった次第。その後、2013年3月4日に古河電工が自社サイトで同件を報じたため公になりました。


ご承知のとおり、オヤイデ電気のケーブル類にはTUNAMIシリーズを始め、電源ケーブルラインケーブルなどにPCOCC-Aが多用されております。同様の素材を導体に採用しているメーカー、例えばサエク、アコースティックリバイブ、クリプトン、ナノテックなども含め、音の要となるPCOCC-Aの生産終了は死活問題にもなりうる事態。アニール処理前のPCOCCに至っては、オーディオテクニカなど、さらに多くのオーディオアクセサリーメーカーが導体に用いており、影響は多大です。かといって、オーディオ業界でPCOCC-H/Aを消費する量は年間数十トンほど。A団5社(古河/日立/藤倉/三菱/昭和)に名を連ねる巨大電線メーカーである古河電工にとって、PCOCC-H/Aの生産量は銅線の全生産量の1%にも満たない量。だからこそ、古河電工は自社ブランドの「HURUKAWA」PCOCC-Aオーディオケーブルの製造販売から20世紀末に撤退。それ以降は黒子に徹する形でPCOCC-H/Aの製造のみを続けていたですが、それも採算に合わないということで、2013年をもって生産終了と相成ったわけです。

ま、いまさらじたばたしても始まらないということで、何か他の導体を探さないといけないのですが、いまのところ未定です。そう簡単に代替品が見つかるようなものではないですからね。そこらへんの事情について先日、ネットオーディオ誌などで多数執筆されている高橋敦氏からPCOCC-H/A生産終了についての取材の申し込みがありました。最初は、よくもまぁPCOCC-Aが無くなって困っている我々に辛辣な質問をされるなぁと思ったのですが、当社の村山社長に確認したところ、あっさりと取材に応じるとのこと。


お会いしてみると高橋敦氏はとても紳士な方で、今回の事案について純粋にリサーチしたいという気持ちが感じられ好印象。2時間あまりの取材の中で、村山社長も実直に質問に答えておりました。私自身も、うちの社長がPCOCC-Aを採用した経緯や、製品コンセプトについて改めて聞くことができて感銘を受けました。高橋氏とうちの社長との間で語られたことを要約した内容が先日「高橋敦のオーディオ絶対領域【第40回】PCOCC製造中止でこれからどうなる? ケーブルメーカー3社に突撃取材!」に掲載されましたので、よろしければご覧下さい。4から5ページ目にかけては、滅多に表に出ないうちの社長の素顔も公開されています。

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