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2012年8月15日水曜日

アクトロニックデバイスを使ったRCAケーブル自作第2弾

先日、コストパフォーマンスに優れたRCAケーブルの自作として、Electrical Express社のアクトロニックデバイス0.9(ACTRONIC DEVICE 0.9mm)を使ったRCAケーブルの自作をご紹介しました。今回は、それより一回り太い導体を有したアクトロニックデバイス1.6を用いたRCAケーブルの自作をご紹介します。

今回の作例で用いるRCAプラグは、オヤイデ電気秋葉原店で売られているRP-202sbGS。2個1組で1,407円です。これを2組、すなわち4個用意します。


RP-202sbGSは、本体が真鍮削り出しの銀メッキ、カバーが真鍮削り出しの金メッキ。カバーは重くて鳴きにくく、センターピンは4分割されて、RCAジャックに差し込んだ際のホールド感がよく、マイナス側のリングも肉厚で、RCAジャックへの差し込み時のぐらつきが少ない、安価ながらよく作り込まれたRCAプラグです。スペック上、適合ケーブル径はφ8.0とありますが、実測では引き出し口の口径が8.4mmあります。アクトロニックデバイス1.6の直径が実測で8.3mmであることから、RP-202sbGSに対してアクトロ1.6をぴったり挿しこみ可能です。したがって、プラグの引き出し口を隙間なく綺麗に仕上げることができ、これほど相性のよいプラグとケーブルはなかなかありません。

こちらアクトロニックデバイス1.6。オヤイデのPA-02とよく似た、薄紫色のシースカラーの多目的ケーブルです。

1.6mm単線を2本有し、銅箔シールドを内蔵した、頑強なケーブルで、お値段は1,260円/mと、造りに比して低価格なケーブルです。アクトロニックデバイス1.6は、スピーカーケーブルとしても、ラインケーブルとしても使用可能です。導体断面積は2スケア相当あるので、許容電流値は理論上15Aです。したがって、電源ケーブルとしても使えるかもしれません。ただし、このケーブルはPSEを取得していないので、電源ケーブルへの使用は自己責任になります。


使用する主な工具。左から、アルミクイックバイス、ハンダコテ台ST-1140Wハンダコテ(1,113円/本)、オヤイデ電気の無鉛銀ハンダSS-47、ホーザン製の万能ハサミN-838ヘビースニップ。万能ハサミはケーブル工作に便利な切断工具ですが、なければカッターナイフで代用できます。一般的な紙切り用ハサミでは駄目です。これらの工具以外にも、今回はケーブルが比較的太い単線であるため、単線の曲げ用にラジオペンチ(ホーザンP-15-150など)もあったほうがいいでしょう。

さて、早速工作に入りましょう。まずは、ケーブルの先端から10mmくらいの外装シースを、万能ハサミを使って剥きます。万能ハサミの刃先でケーブルを挟み込み、外装シースの外周をなぞるようにして慎重に切れ込みを付けていき、その切れ込みを広げるようにケーブルを手で曲げて、さらにハサミの先端やカッターナイフを使って、切れ込みを広げていきます。


外装シースを剥がしたら、銅箔が見えてきます。これも万能ハサミやカッターや手先を用いて剥がします。


銅箔を剥がすと透明の樹脂フィルムがありますので、これも銅箔と同様に取り除きます。さらに介在物である透明のチューブが数本ありますので、これも根本から万能ハサミなどを使って切り落とします。


赤および白の計2本の芯線のみを残した状態。赤い絶縁被覆を被った赤線をプラス(信号線)、白線をマイナス(アース、グランド)に用います。

万能ハサミなどを用いて、白線を半分以下に切り落とします。そして、赤線および白線の絶縁被覆を先端から4mm程度取り除いて、導体を露出させます。


RCAプラグの本体からケーブル固定用のネジと透明のプラスチックチューブを取り除いておきます。今回の作例では、このネジとチューブは用いませんので、破棄してもらって構いませんが、細めのケーブルをこのRCAプラグに取り付ける場合は、このチューブにケーブルを通して、ネジでケーブルを押さえ付けて固定します。

ついで、ケーブルにRCAプラグのカバーを通し、ケーブルの先端にRCAプラグの本体を挿しこみます。

ケーブルの先端にプラグ本体をこのように差し込みます。ケーブルの赤線の導体が、プラグのセンターピンに連なる内部電極に、白線の導体がプラグ本体の内側のハンダ付けしやすい位置にくるように、ラジオペンチなどを用いて導体の位置を調整します。

位置決めが終わったら、プラグをバイスに固定し、プラグとケーブル導体をハンダ付けします。

今回はケーブルおよびプラグに予備ハンダせず、いきなり本ハンダしました。理由は、ケーブルの導体が太くて硬いため、プラグ内での取り回しの自由が効きにくく、予備ハンダの盛り上がりがあると、かえって位置決めの邪魔になるためです。もし、薄く予備ハンダできるなら、本ハンダが馴染みやすくなるので、やっておくに越したことはありません。


マイナス側のハンダがプラグの外周にはみ出た場合は、はみ出たハンダをカッターなどで取り除きます。そうしないとプラグのカバーが閉まりません。

今回の製作例は、ケーブル外径とプラグ内径がほぼ同じため、プラグのネジによるケーブル固定ができません。ネジをケーブルに無理に食い込ませると、ケーブル内部の導体とネジとが接触して、短絡の原因になりかねないからです。

今回の作例では、ネジ固定をおこなわない代わりに、フッ素樹脂テープASF-110を巻きつけて、ケーブルとプラグの固定を補強します。巻きつけは1重半くらいに留めておきます。それ以上、フッ素樹脂テープを巻きつけると、プラグカバーが閉まらなくなります。
 
なぜフッ素樹脂テープを用いるかと申しますと、フッ素樹脂テープは頑丈で、粘着力も強く、何度でも貼り直しが利き、厚みが薄いためです。さらに、引っ張ると伸びて密着させやすく、経年劣化が少なく、ビニルテープのような経年によるべたつきや剥がれや緩みがほとんどなく、電気絶縁性も抜群といった、数々の利点があるためです。1巻き1,680円と高額なテープですが、ケーブル工作にはぜひ常備しておいて欲しい絶縁テープです。



今回はフッ素樹脂テープで固定強度を補強しましたが、ネジ穴に瞬間接着剤を流し込んでやってもいいでしょう。ただし、接着剤の使用は、万が一プラグを外したくなってもプラグを外せなくなるため、その覚悟の上、行って下さい。

なお、このフッ素樹脂テープの巻きつけ工程は、できればやったほうがいいのですが、必須ではありません。理由は、この作例の場合、ハンダ付けで固定強度がかなり保たれているためと、ケーブルとプラグとの隙間がほとんどないために、ケーブルがぐらつきにくく、よほど手荒に扱わない限り、ケーブルからプラグが外れる事はないためです。



プラグカバーをプラグ本体側に引き寄せて被せます。これにてRCAケーブルの完成!


出来上がったRCAケーブル。単線で、太くて硬いので、エージングには時間を要するケーブルです。60時間以上はかかるでしょう。ただ、エージング初期に於いても、本ケーブルの性能は発揮されます。第一印象は、極太単線ゆえに中低域の厚みと熱気が抜群で、押しの強い、やや剛直ながらもパワーみなぎる、ハイCPなRCAケーブルです。繊細で柔らかい雰囲気を好みとする人には向かないケーブルなので、万人向きとはいきませんが、RCAプラグの銀メッキの効果からか、高域が埋もれることなく、ほどよく散乱して綺麗な音場感を作り出しています。

 ケーブルが硬いので取り回しがしにくいことと、プラグが大きめなので、オーディオ機器のRCAジャックが近接している場合は、プラグカバーが互いに接触しやすいということが欠点と言えば欠点です。ちなみに、RCAジャックの間隔は、穴の中心同士が14mm以上であれば接触を回避できます。ま、機器への差し込みにおいて、隣接するRCAプラグのカバーが接触しても、特に問題はないのですけどね。

ケーブル引き出し口の様子。ほぼ隙間なく、美しく仕上がっています。

この作例の材料代は、1mペアを製作するとして、ケーブルが1,260円x2で2,520円。RCAプラグが2個1組1,407円x2組で2,814円。 計5,334円かかりますが、物量的および音質的には3倍以上の価格的価値はあります。完成品を買うのもいいけど、市販品に無い魅力を備えた自作ケーブルの世界に、皆さんもぜひ一歩踏み出してみてください。そのパフォーマンスのすごさと、楽しくもあり、大変でもある工作の魅力にはまりますよ!



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